<特別インタビュー>「先生」と呼ばれる現役サッカー選手。岩政大樹はなぜ書くのか?
自分にしかできないことを。岩政の飽くなき探求心。
サッカー以外で今の自分ができること
ここまでの言葉からも分かる通り、岩政大樹という選手は、少しほかのサッカー選手とは違う感性を備えている。鹿島アントラーズからタイリーグへ渡り、その後、ファジアーノ岡山で2シーズンをプレー。J1、2からのオファーがあったにもかかわらず、関東1部リーグ、Jリーグで換算すれば5部に相当する東京ユナイテッドでプレーしていることもそのひとつ。ほかにも、料理教室に通ったり、英語の勉強をしたりと、現役選手とは思えない「習い事」がぽろぽろとその口からこぼれてくる。
「岡山にいたころは車で往復一時間の間ずっと英会話を流していて、ヒアリングはだいぶできてくるようになりました。料理教室は最後まで修了しましたよ。おかげで最近は娘にもある程度のものは作れるようになったかな」
何がそこまでして「サッカー以外のこと」に彼を駆り立てるのか。その質問に対する答えはよどみがなかった。
「人生のなかで“自分だからできる”ということをしていきたいんですよね。僕は決してサッカー選手としての才能があったわけではなかったし、プレーの幅が広いわけでもない。その中で今日まで、“自分ができること”に特化してやってきたつもりです。だから、サッカー以外のことについても、“今の自分だからこそできること”はなんだろう、という思いがいつもあるんです。年齢も年齢ですから、現役もそんなに長くないし、さっきも話した通り、現役選手って時間があるから、そのうちにできることはやっておきたい。何かを残しておきたい。そのひとつが料理であり、英語であり、書くことだったりする。忙しいのが好きなのかもしれない(笑)」
英語も料理もできて、原稿が書けて教師の免許も持つ。そのうえで本業のサッカーでもしっかりとしたパフォーマンスと結果を残してきた。自主トレに取り組む時間は絶対に確保してきた。完璧主義者のようにも見える。
「でも、すべてが完璧でなきゃいけないとは思っていないんです。原稿だけは発表するということに対しての責任を持ってやっていますけど、それでもレベルで言えばサッカー選手が書いている、という域を出ないと思っているし、料理や英語に関しては極めるとかそういうことは全然考えていないですから」
料理をごちそうになったことはないから、その味は分からないのだけれど、きっとやっぱりおいしいのだろうな、と思う。